第2章 お前の心臓、預かっておく
「とりあえず七千ベリー貰っておこう」
「ああぁぁー!私の全財産んんんー」
ヒラリとペンギンから金を受け取ると、涙目で訴えてきた。
その表情は余計おれの加虐心を擽る。
「さて、残り二万八千ベリー…どうするんだ?」
残額を言えば、とうとう黙り込んでしまった。少し意地悪が過ぎたようだが、何分おれは今機嫌が良い。
この女の選択肢は、二つ。
「このまま“人間屋”に売り飛ばされるか…おれの船に乗っておれの為に働くか」
「…っ」
「さあ、選べ」
ニヤリと笑って見せれば、女は下唇を強く噛み締め、なんとも言えない悔しさに滲んだ顔。
だが、こいつも人間。“人間屋”に売り飛ばされた後の結末は迎えたくないだろう。
「………アンタの船に乗る」
「くくっ、決まりだな」
腑に落ちないのだろう、噛み締めていた下唇から薄ら血が滲んでいた。
「ただし!残金分働いたら直ぐ降りるわよ」
残金分とは言え、隙を見て逃げ出し兼ねない。
おれが居れば安易に妨げるが、他のクルーなら返り討ちに合うだろう。
「…そうだな。なら、担保でも貰っておくか」
「!?」
右手で女の心臓を素早く突いた。
「な、なに…を…」
ゆっくりと崩れ落ち、意識を手放した女におれは言う。
【お前の心臓、預かっておく】