第22章 何度でも、また私を見つけ出して
「アクア」
暫くの沈黙の後、ローが私の名を呼ぶ。
ゆっくりと身体を離され、俯いていた顔を彼の方に見上げれば、とても優しい色をした彼の瞳と視線がぶつかった。
「何度も言われてしつこいようだが、聞いてくれ」
「……うん」
「おれはお前を死なせねェ」
「………」
「だからお前を見捨てたりしない」
“死なせねェ…死ぬわけねェだろうが!”
“おれがお前を守る!”
私が不安で弱気になっている時、ローが何度も言ってくれた言葉。
たかが言葉なのに…
私はどれだけそれに救われただろうか。
苦しそうに吐き出したローの顔は今でも忘れない。
「……だが、おれはお前を守りきれなかった」
初めて聞く否定的な台詞に、心臓がドクンと鳴った。
「今回の件のように…これから先、おれの船に乗っていればまたお前は傷付き、同時に病にも苦しむだろう」
「…でも、これは私が勝手にやった事で、」
「同じだ。この先も無事でいられるとは限らねェ」
此処は海賊船だからな、と伏し目がちに呟いた彼が、初めて弱々しく感じた。普段の余裕な笑みなど今は何処にも見当たらない。
「色々考えた。お前にとって何が最善策なのかと」
「…ロー」
「お前が今一番優先すべきは、その病を治す事だ」
俯き加減だったローが、フッと顔を上げた。
私をその瞳に映すと優しく微笑む。
だけどそれはすぐに消え、何かを見据えたような真剣な眼差しに変わり。
「だから、アクア」
煩いくらいに鼓動が鳴る。
「革命軍の所で、治療を受けろ」
震えていたのは、貴方だったの?