第21章 どうか、彼女が笑っていられる世界を
「船長!オペ室の準備終わってます!」
船に戻らないおれ達を心配してか、ペンギンが走ってそれを知らせに来た。
「わかった。すぐ行く」
こんな事をしている時間などない。
おれはアクアの身体を抱いてるベポを見やり。
「ベポ、しっかり抱いてろよ」
「アイアイ!」
右手を翳し、青白い膜を張らせた。
それが自船まで覆っているのを確認し、もう一度アクアの顔を見る。
先程より血色の悪い肌。
もう瞼は上がらないようで、目を閉じたまま浅く呼吸をしている。
応急で傷口を塞いだ誰かのつなぎの布切れは、もう意味などなく止めどなく血が流れ出ている。
―――クソッ、一体誰が…
アクアに深手を負わせた人物。
それなりに戦いを心得ている彼女がここまで重症を負うなんて。
いや、それは気掛かりだが、今は後回しだ。
「目を覚ましたら…ちゃんと説明しろよ」
彼女におれの声が聞こえているかわからないが。
「…必ず助ける」
おれは能力を使い、一瞬で船へ戻りオペ室へ入った。
掌の赤を拭いながら。