第19章 この手からすり抜けて、君は何処に
「船長!」
慌てた素振りのペンギンが、バタバタと音を立て食堂に入ってきた。息を切らしている彼はそれを整えると。
「はァ、はァ……今朝、アクアを見たってやつが…!」
「?!」
身体が勝手に動き、跳ねるように椅子から立ち上がった所為で、座っていた椅子は音を立てて倒れる。
ペンギンに近付こうと足を伸ばすと、廊下から盛大な足音が聞こえ、同じように息を切らしたクルーが扉の前に立ち止まった。
そいつは先程まで買出しに出ていた奴だ。
「おれ…アクアが梯子から降りる所を見ました…っ」
「……降りた…?」
「はい!正直、その時は酔っ払ってて見間違えかと………でも今思えば…アクアで間違いないです!」
頭が痛い。まるで鈍器で殴られた気分だ。
やはり、彼女は誰にも何も言わず、勝手に島に降りたらしい。
どうして、何故そんな事を…
「すみません…呼び止めなくて…」
「…いや、お前は悪くねェよ」
ここでそれを咎めても仕方が無い。問題は、アクアが今何処にいるか、だ。
「何人か残して後は島に降りろ。アクアを探しだせ」
「了解しました!!」
「ベポ、ペンギン、シャチ。それから何人かはおれと一緒に来い」
「はい!!」
【この手からすり抜けて、君は何処に】