第19章 この手からすり抜けて、君は何処に
あれからどれくらい経っただろうか。
相変わらず姿を見せないアクア。
クルー全員に声をかけ、船内を隅々まで探したが、彼女の痕跡は何処にもなかった。
昨晩はずっとこの腕の中に閉じ込めていた筈なのに。
「ホント…どこ行っちゃったんだろ…」
「…やっぱり、島に降りたんじゃ…」
「まさか。いくらアクアでもそこまでしないだろ」
心配しているシャチとベポに、そんな事は有り得ないと言い張った。
だが、こうも何処にも見当たらないと、その線しか残っていないのも事実。
「でもね、キャプテン。おれはそうとしか思えないよ」
「…どうして言いきれる」
「だって…キャプテンからしか、その匂いがしないんだ」
「…匂い」
「そのピアスの匂い」
アクアにやった、おれと同じ二連のピアス。
それは特殊なもので、動物にしか分からない匂いを発している。出会った当時、勝手に逃げ出さないようにと、二度と取れないように細工してアクアの耳につけた。
この船では、ベポだけがそれを感じる事が出来る。
だが、彼がその匂いを辿ってアクアを見つけられないとなれば、それは…