第19章 この手からすり抜けて、君は何処に
一人云々と考え、自室に戻る途中。
「おはようございます、船長」
後ろからペンギンに声を掛けられた。
「ペンギン、ログは溜まったか?」
「あと数時間で溜まります」
「そうか…」
それだけ聞き、再びペンギンに背を向け、自分の部屋の扉を開けようとした時。
「アクアは一緒じゃないのですか?」
ペンギンがおれにそう尋ねてきた。
「…会ってないのか?」
「今日は一度も見かけてないですね」
「…おれもだ」
おれがそう言うと、ペンギンは目を丸くした。
そして「そういえば…」と顎に手を掛け、眉を寄せながら。
「九時頃に船長室に行った時、既にアクアの姿は無かったです。船長が一人ベッドに寝ていただけで…」
「……なんだと」
「薬を飲みに食堂に行ったのかと思ったんですが…食堂にも甲板にも居なかったです」
どういう事だ。
所詮船の中。なのに誰もアクアの姿を見ていないなんて。 隠れんぼを始めた覚えなんて無い。
彼女は何処に消えたのか。
「………どういうつもりだ、アクア…」
探しても見つからない彼女へ疑問を投げかけても、此処にいない彼女は返事をしてくれなかった。