第19章 この手からすり抜けて、君は何処に
「…来ていない、だと?」
「はい。朝方目が覚めて、それからずっと食堂にいたんスけど、アクアは来てないですね」
若干顔色の悪いシャチは、水を飲みながらそう言った。
おれが怪訝な顔をすると、少し考えたような素振りを見せ。
「今日は天気が良いし、甲板で洗濯物干してるんじゃないですか?」
確かに、アクアはこの船の洗濯物を任されている。特に天日干しには強い拘りがあったようだ。
おれはシャチに軽く手を上げ、甲板へ向かった。
「おはようキャプテン!あれ、アクアは?」
「ベポ…一緒じゃないのか?」
「違うよー、今日は一人で干してるんだー。良い天気なのに、アクア来ないんだもん。てっきりキャプテンとまだ寝てると思ったよ」
空は晴天。
ここ最近では見られなかった程の快晴で、所謂天日干しには打って付けだ。
なのに、彼女は此処にもいない。
一体何処で何をしているのか。
まさか、勝手に島に降りたのか?
…いや、明日一緒に街に行こうと昨日約束した筈だ。なのにそんな勝手な事をするとは思えない。