第19章 この手からすり抜けて、君は何処に
こんなに人を愛しいと思った事は一度もない。
ただの処理にしか過ぎないその行為で、心が満たされた事も。
目に涙を浮かばせ、潤んだ瞳でおれを見上げるアクア。そして、何度もおれの名を呼ぶ。
それだけで微かに保っていた理性は簡単に崩され、おれを限界へと煽る。
結果、無理をさせてしまったようで。
自身も身体を震わせた後、そのまま意識を手放した。
息を整えベッドに横たわり、アクアの身体を抱き寄せる。
疲れきって眠っている彼女の額に何度か口付け、おれも目を閉じた。
そういえば、言い逃してしまった。
彼女が目を覚ましたら、きっと恥ずかしさに顔を赤らめる彼女にこう言おう。
「愛してる……アクア」