第18章 貴方を愛してしまった
そっぽを向いた私の顎を掴み、唇を重ねる。
ほんのりお酒の香りと、彼が愛用する香水の匂いが混ざって、溶ける。
半ば諦めたような、でも嬉しいような気持ちになって、私は目を閉じた。
「…もう、必要ねェな」
「え?」
蝕むようなキスが止み、顔を上げたローを見れば、彼は能力を使い、その掌にシュッと何かが現れた。
そしてそれを満足そうな顔で、私の胸に押し当てる。
すると、それはすんなり私の身体に入ってきて、大きくドクンと脈を打った。懐かしい感覚。
「お前がおれから離れねェなら、奪っておく必要がねェからな」
いつの日か、ローに捕られた私の心臓。
正直自分でもすっかり忘れていた。
だって、そんな物が無くったって、私の心はすでに…
「ロー…」
「あァ」
「好き」
「…知ってる」
互いに目を合わせ、微笑む。
そして漸く笑い合った後、どちらかともなく再び唇を重ねた。
ローが今から何をするか、私でも分かる。
きっと、それは…
人生で一番、優しくて甘い時間。