第18章 貴方を愛してしまった
「何をしている」
つかつかと近寄ってきたローは相変わらずの不機嫌そうな表情で。
全く、軟禁されて不機嫌なのは私の方だっていうのに。
「…何って、」
「ぼーっとしてんじゃねェよ。行くぞ」
「え…、行くって…」
何処に?なんて言葉を口にするより先に、ローは私の掌を握って。
「決まってんだろ」
一瞬、青白い膜に包まれたと思ったら、見える景色は一変して。
足元には甲板の上とは違う砂浜の感触があって、先程見送った筈のクルー達が再び目に映った。
「…ロー…?」
目の前にいる彼の顔を見上げれば、口許に弧を描いている。そして、とても優しい眼差しで。
「明日、服でも買ってやるよ」
隈の濃い目を細め、笑った。
―――なんて愛しい時間だろう。
触れた手は温かくて、力強いのにどこか優しいもの。彼の横顔も、この空気も。全てが愛しくて、心がキュッと鳴る。
ずっと、その手を離さないで欲しい。
私だけに触れて、私だけを抱きしめて。
“お前はおれのもんだ”
私は随分前から彼に捕らわれていた。
あの頃は、それが疎ましくて仕方なかったけど。今はそれを自ら望んでいる。
それどころか、私はいつの間にか貪欲になっていたようで。
―――貴方も、私のものよ。
―――例え、離れ離れになったとしても。
私の手を引くローには聞こえないように、小さく呟いた。