第16章 笑顔になれる言葉を持ち帰ろう
「へェー…初めて見る機器ばかりですね」
「あァ。おれもまだまだって事だ」
それなりに医療文化が発達しているこの島では、必要とする医療機器が全て揃いそうで助かった。今日から治療が始められる。
「それにしても…良いんですか?アクアを街に連れて行かなくて」
「アクア、帰ってもずっと不貞腐れてるんだろうなー」
おれと同行しているペンギンとべポは、「不機嫌アクアの相手は大変そうだ」と揃って言う。そんな事は、言われなくとも目に見えているが。
「あれでも一応病人だ。それを連れ回すやつがあるか」
「…そうだけどー、ねェ?」
べポまで口を尖らせて。
アクアの真似か。ワザとか。
「しかし船長。息抜きも大切な“治療 ”の一つですよ?」
「…」
「あと、“軟禁”はストレスの素です」
ペンギンが最もらしい事を言う。相変わらず食えねェ野郎だ。
「チッ…、明日な」
「くくっ…アクア、きっと喜びますよ」
全く、どうしてこうも全員アクアに甘いのか。ペンギンもべポもシャチも、他のクルー達も。おれの船長としての威厳が薄れるだろうが。
ふと、街のショーウィンドウに並んだ女物の服が目に入った。派手過ぎず、でも華やかなワンピース。アクアに似合いそう服だ。
明日、一緒に出掛けたら服でも買ってやるか。
そうすればアイツも機嫌直すだろう。
…なんて思ってしまうおれも、結局アクアに甘いらしい。
「これで全部揃っただろ。次は情報集めだ。行くぞ」
「了解」
「アイアイ、キャプテーン!」
未だに不貞腐れているだろう君の元へ。
【笑顔になれる言葉を持ち帰ろう】