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【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第16章 笑顔になれる言葉を持ち帰ろう



 減らない口をおれのそれで塞ぐ。
 何も言わせないように、アクアの言葉を呼吸ごと飲み込むように。

 時折零れる苦しそうな吐息に良心が痛むが、頑固で言い出したら曲げない彼女にはこうするしかなかった。



 だって聞きたくないだろ?

 お前が死ぬなんてくだらねェ御伽話なんて。






「はぁ…ふ、ろ、ロー…ッ」

 漸く唇を解放されたアクアは、眉を寄せ大きく肩で息をする。やり過ぎたか、なんて少しの罪悪感を抱えながら、だがそれを謝罪する事も無く。

「焦る事はねェ。もう直サボから連絡が来るだろう」
「………」
「今は寝ろ。後でまた来る」
「…ん」

 小さく呟いたアクアが目を閉じたのを確認し、部屋を出た。





 アクアが眠る部屋から数歩、歩いた所で、壁に手をあて息を吐く。

「焦るな、だなんて…よくおれが言えたもんだな…」

 一番焦っているのは他でもない、おれだったいうのに。


 強く握り締めた拳を、自分の不甲斐なさと共に壁へ投げ捨ててみれば、乾いた音が長い廊下に響いた。
 なのに、それよりも煩く鳴る鼓動の音は、聞こえないフリをして誤魔化す他無い。



  【不協和音のワルツがはっきりと】

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