• テキストサイズ

【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第16章 笑顔になれる言葉を持ち帰ろう



「―…ろ、ぉ…」
「!」

 俯いていた顔を上げれば、薄らと意識を戻したアクアが、か細い声でおれを呼んでいた。
 その瞳は虚ろで、焦点が合っていない。

「…わた、し…は、」
「あァ…食堂で倒れたらしい」
「ん…なんとなく、覚えてる…」

 辛いのか、目を閉じゆっくりと呼吸をするアクア。おれは柄にも無く、胸が締め付けられて。切ない想いが身体の芯から沸々とこみ上げてくる。


 そっとアクアの頬に触れた。

 擽ったいのか、微かに口元を歪ませて。

「ふふ…ローの手、冷たくて気持ちいー」

 今にも消えてしまいそうな声。急に儚く感じるアクアの微笑み。
 それが重なると、こんなにもどうしようもない気持ちになるのだろうか。


「何の前触れもなく…急に倒れたの、初めて…なの」
「…」
「これって…もう近い、って事…だよね…」
「………何がだ」
「私の、身体の…限界、よ…」
「…」
「もうすぐ…なの」
「…何言って、」
「私…もうすぐ死、」
「死ぬわけねェだろ!!」

 ハァハァ、と息が切れる。

 珍しく大声を上げたおれに、アクアは閉じていた重い瞼を弱々しく開き、おれを見上げた。

「死なせねェ…死ぬわけねェだろうが!」
「…ロー…」 
「おれがお前を守る!それだけだ…ッ」
「……でも、」
「もう黙れ…」

/ 184ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp