第16章 笑顔になれる言葉を持ち帰ろう
閉じ籠っていた資料室に飛び込んできたシャチは「何の前触れもなく急に」と言っていたが、おれが傍にいたら気付けたのかもしれない。
目の前には、静かに眠ったまま意識を戻さないアクア。
苦い程の後悔がおれを襲う。
“貴方には話しておきます”
アクアが席を外していた間に、サボがおれに耳打ちした話の内容が頭から離れない。
そんな事絶対無い、なんて思っても、それを確証出来るものなんておれには持ち合わせていない。
“本当は、サザーランドさんの息子さん以外にも、冬身病を患っている人間が二人いるんです”
“いや…正確には、いた”
全く、後味の悪い話だ。
そんなもの、聞きたくも知りたくもなかったと言うのに。
“その二人は…治療法が見つかる寸前で…”
あぁ、本当に気分が悪い。