第15章 薄れる意識の中、呼んだ名は
「あれ?キャプテンは?」
「んー、あとで食べるってー」
ローを呼びに行ったはずの私が、一人で食堂に現れた事に、べポが首を傾げる。
私はため息をつくように、口を尖らせ答えた。
「最近船長見かけねェなー」
「確かに。前からあまり出歩かない人だったけど、こんなに篭もりっきりなのは珍しい…」
他のクルー達も心配してる。
彼は皆の優しさに気付いているのだろうか。
いくら船長とは言え、横暴だし身勝手だし。それが彼の心地良い距離なのかもしれないけど。
「まあ、それが船長なのだから仕方無いさ。進路の事があるから、飯はあとでおれが持っていこう」
薄い苦笑いを浮かべながらコーヒーを啜るペンギン。なんていうか…彼は大人だなあ。
「ほら、アクアも食べな。無くなっちゃうよ!」
「…えっ、あ、うん…」
大人なペンギンに見惚れてしまって、つい箸を止めていた私。
ペンギンはそれに気付いているようで、鼻でフッと笑った。なんか悔しい。
顔の熱が上がりそうなのを抑えて、再び目の前の食事に手を伸ばした。
…つもりだった。