第14章 離さない、離さないで
“それじゃあ、また”
爽やかに去って行ったサボを玄関先で見送れば、外はすっかり晴れていて。
夏島特有の湿っぽさはやはり得意では無いなと思いながら、おれ達も船に戻る、とサザーランドに伝える。
彼は少し寂しそうに笑った。
「いろいろありがとう。サザーランドさんのおかげです」
「いや、僕は何もしてないよ。ただアクアちゃんの背中を押す手立てになれたのなら、それだけで光栄さ」
先程のサボと同じように、彼もアクアの頭を撫でる。きっと自分の息子と重ねているのだろう。
そうやって誰にでも、大切に想う人間がいるものだ。
おれにも、きっとアクアにも…
「息子の治療には2年の月日がかかった。これから大変だと思うけど…諦めないで頑張って」
「…はい!」
名残惜しそうな彼を背に、おれ達は雨でぬかるんだ道を戻った。