第14章 離さない、離さないで
「正直に言うと、僕は医療の知識が乏しく、どんな治療をしているのは…わかりません」
「わからないって…」
クソ。肝心な所を掴めないのか。
治療法さえ分かれば、おれでも何とか出来るというのに。
「だけど、安心してください。僕が頼めばそれに関してのデータをくれると思います。必要な医療機器も集められます」
そうならそうと早く言え。
なんて言葉は口にせず、再び名無しの方へ向き直したサボを見つめた。
「だから…少しだけ時間をください。必ず貴女の病も治せます」
「…ありがとう、ございます…っ」
やっとだ。
おれにとっては短いものなのだろうが、アクアは違う。
ずっと一人で抱えてきた病と決別出来る日がやっと近付いてきた。
その希望に満ちた瞳は、彼女と出会った頃のものとは全く違うもので。嬉しさが込み上げてくる口許はどうやら隠しきれないらしい。
そうやって、ずっと笑っていてほしい。
もう絶望なんて必要ないんだ。
そんなもの、アクアの世界から消えてしまえ。