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【外科医】 キミ色に染まる  【完結】

第14章 離さない、離さないで



 殺風景な部屋。
 必要以上の物がないこの空間に、大分雨足の弱まった水の音が響く。

 もうじき雨は止むだろう。

 そんな事を頭の隅で考えながら、向かい合って椅子に座る三人を、少し離れたソファーに腰掛け眺めた。




「まず、冬身病について話しましょう」

 革命軍参謀総長…サボと名乗る男は真っ直ぐアクアを見据えて口を開く。アクアは黙ったまま頷いた。

「貴女も分かっている通り、原因不明です。前例が少ない上に、症状が現れる人も稀で、その存在を知る人はほとんどいません。実際我々もサザーランドさんの息子さん以外に、この病気を患っている人に出会うのは初めてです」
「…私もです」
「つまり、出身や家系も関係ないという事。突発的、或いは天性の生まれ持った物だと考えています」

 アクアは少しだけ顔を歪めた。

 きっと彼女は、どうして自分が、と思っているのだろう。


「いろいろ調べましたが…原因については、正直突き止められませんでした。どの検査を受けても、特に異常な問題点はなくて」
「知ってます。ローに言われました」


 彼女が初めておれの前で倒れたあの日。

 確かに何もなかった。

 仮にも医者である自分の知識を疑うほど、何もなかったんだ。
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