第13章 それは甘い束縛の音
未だに口を結んだままのサボさんを見つめる。
と、ひとつ深いため息をついた後、フッと唇に弧を描いて。
「…冬身病はまだまだ謎が多いです。治療法を見つけたとは言え、貴女に効くかどうかは保証できません。それでも…知りたいですか?」
「…はい!」
どうやら私の想いが彼に伝わったようで。ありがとう、と頭を下げれば「サザーランドさんの頼みは断れないんで」と苦笑いを浮かべた。
とても、優しい人なんだと思う。その丸くて大きな瞳には、それが滲み出ていた。
「おい」
サザーランドさんとサボさんが向き合って話している最中、いつもより少し低い声が聞こえてローの方へ向き直す。
「なに?」
「…お前、あんまりフラフラすんじゃねェよ」
「?」
その意味が最初はよく分からなくて首を傾げたけど。
考えれば、原因はきっと私の視線の先にサボさんがいたから。
「…ヤキモチ?」
「………チッ」
ふいっと顔を背けた彼から聞こえた舌打ちは、それが肯定なんだと物語ってくれる。
先程まで張り詰めていた空気が一気に穏やかになった気がして。
「残念だけど、私はフラフラ出来ないの」
「…」
「隈が酷い番犬にマーキングされてるので」
そう言って、強制的につけられた私の耳にぶら下がる二連のピアスをシャランと鳴らせば、満足そうに口角を上げた彼。
【それは甘い束縛の音】