第13章 それは甘い束縛の音
「サボくんに頼みがあるんだ」
「…なんですか?」
「この女の子、アクアちゃんもどうやら僕の息子と同じ病気らしい」
「!…冬身病、ですか」
彼はその大きな瞳を更に見開かせ私を見る。
「冬身病…?」
「ああ、勝手に命名したんだ。我々はそう呼んでいる」
なんせ原因不明で常例がないからね、とサザーランドさんは言う。
「話を聞いたら、息子と全く同じなんだ。そしたらほっとけなくてね」
「…」
「なんとかしてあげたいんだ。サボくん、頼むよ」
サボ、と呼ばれた人は少しだけ眉根を寄せ、視線を落とした。
そりゃそうだろう。
会って間もない私たちに、ぺらぺらと喋るほど、彼は馬鹿じゃないはず。
きっと、疑っている。
「えっと…サボ、さん」
私の呼びかけに彼はゆっくりと顔を上げた。
「突然な事ですみません。サザーランドさんの言った通り、私も冬身病なんです。小さい頃から雪が降ると体調を崩して、最近は何もない時でもダメで…」
「…」
「無理に教えて、とは言わないです。でも…少しでも、この原因不明な病について知りたいんです…自分を苦しめるこの病気を…」
ずっとずっと苦しかった。
家族と故郷を無くし、たった独りでこの病と戦う日々は、とてもじゃないけど辛くて。あまりの情報の少なさに、半分は諦めがついていたのだけれど。
でも、僅かな望みがまだ残っているのなら。私はそれに縋りつきたい。
“死なせねェよ”
だって私はまだ死ねないから。