第9章 看病ver.コウ【無神コウ】
「…コウ、くん…」
ーー恥ずかしくて耐えられないよ…
静まり返った廊下を歩きながら、
コウは相変わらずニコニコしている。
『もうすぐ着くから我慢して?…それとも…ずっと抱っこされてたい?…ふふっ、オレはそれでもいいよ?』
「なっ…そんな…違うし…っ!」
『強がらなくてもいいよ、エム猫ちゃんは素直じゃないなぁ』
「なっ…!」
ケラケラとコウが笑う。
からかわれているのは分かっている。
それでもドキドキしてしまう。
動悸がするのは熱のせいだけじゃない。
『あーあ、もう着いちゃった、ざーんねん』
ガチャーー
コウが片手でドアを開ける。
が、ここはコウの部屋だ。
「!…ここって…」
ベッドに優しく名前を下ろす。
『そう、ここはコウくんの部屋だよ?』
そして名前の耳元に顔を近づける。
『オレが朝までずーっと…看病してあげるよ』
「…っ!」
思わずコウを見る。
優しそうな、それでいて狙いを定めたようなケモノの目。
心拍数が上がる。
そんな名前を満足げに見つめて、コウは立ち上がった。
『喉が渇いたでしょ?待ってて、…薬も持って来なきゃね』
そう言って部屋を出て行くコウを名前はぼんやりと見つめていた。