第9章 看病ver.コウ【無神コウ】
『…ん?』
「?」
コウが急に真顔になって名前をじーっと見つめる。
『エム猫ちゃん…なんかすっごい顔、赤いよ?』
「…え?」
ーーまさか、今からかわれてドキッとしたから?
そういえば、顔が熱い。
ジワジワと体が熱を発しているみたいに。
『大丈夫?…早く休んだほうがいいって』
いつもとは違う名前の様子を気遣って、部屋に戻るように促す。
「うん…でも身体が重くて…」
関節が鈍く痛む。
立ち上がろうとしても、上手く体を起こせない。
『もしかして…!…待ってて、オレ体温計取ってくる!』
急いで引き出しから体温計を取ってくる。
『ほら体温計…あ、体起こそっか…よいしょ、っと…』
「あっ…」
コウの腕がするりと伸びてきて、上体を起こしてくれた。
やっぱり身体が重い。
『熱、計ってみよう…入れるよ?』
「……うん」
コウの手が鎖骨に触れる。
体温計がひんやりと火照った身体を刺激した。
『ちゃんと計れるようにオレが…押さえててあげるから』
ふわっと名前を抱きしめて、体温計が緩まないように腕を押さえる。
「…っ」
ーーこんなことされたら……体温上がっちゃうよ〜…!
『つらい?よね…エム猫ちゃんの身体、すごい熱い…』
そう言って少し強く抱きしめてやると、
名前の身体がピクンと跳ねた。
「っ…!」
ピピピピピピピーー
コウが体温計を取り出す。
『!…こんなに…!』
コウの手にある体温計を覗く。
「わ…38.5℃…」
どうりでこんなにだるいわけだ。
まあ0.5℃くらいはコウが抱きしめていたせいかもしれないけど…
『早く部屋へ行って休もう…エム猫ちゃん、ひとりで歩けないでしょ?…だからこのオレが』
と言いながら、名前の膝に腕を回し、もう片方は肩を抱く。
そのまま軽々とソファーから持ち上げた。
『…よっ、と…暴れちゃダメだよ?』
「えっ…ちょっと…!」
『そ、…これがいわゆるお姫様抱っこっていうやつだよね?』
「…っ!」
ニコッと笑ってコウが言う。
お姫様抱っこという響きにドクンと心臓が鳴る。
『じゃあ行くよー♪』
戸惑う名前を抱いてリビングを出る。