第1章 初登校
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ピチチ……チュンチュン…
暖かい日差しが、お菓子や飲み物が散乱した部屋に差し込む。床には三人の男女が転げるように無造作に寝ていた。
『みなさーん!新生活、いかがおすごしでしょうか?』
早朝、つけっぱなしで寝てしまったテレビから甲高い声。確か昨夜は、私の高校入学祝いパーティ兼引っ越し祝いをこの部屋で催していた。私の部屋だ。
「……か………うか……おうか…」
低くて気だるそうな声。聞きなれた安心する声が耳元で響く。私の頭は、ゴツゴツした腕の上にあった。首が痛い。声が…近い。息が私の耳にかかるくらいに。
「う…ん…」
うっすらと目を開ける。そこには、昨日一緒にどんちゃん騒ぎをした幼馴染の顔。
桜「銀ちゃん…おはよー…顔近い…」
銀「はいはい、おはよ。近いってお前…お前が俺にひっついてんだろーが。足退けろよ。重いんだよ…」
よく見ると私の足が銀時の体を挟むような体制になっていた。
「あ…ごめ…」
足を退けようとする。何だか体が重い。ふと自分の腹部を確認すると、私の腹の上で気持ちよさそうに寝ているもう一人の幼馴染、晋助を発見。
桜「晋くん…重い。起きてー(-。-;」
晋「……」
返事はない。代わりに聞こえてくるのは静かな寝息だけ。サラサラの髪の毛が朝日に反射して眩しかった。
銀「おい、高杉。てめー何桜花の腹の上で寝てんだよ。おめーが退かねぇと桜花が起きれねーだろうが!朝からイライラすんな、コノヤロー」
銀時は私たちが寝ている反対側の足を、勢いをつけて晋助にめがけた。その反動で、私に覆い被さる銀時。ふわふわの銀髪を、見慣れた横顔を見上げながら思った。
今更ドキドキなどしない。私たちは小さい頃からずっと一緒。家も隣同士で何をするにも三人一緒だったのだ。三人で寝ることなんて日常茶飯事だ。二人は兄弟同然で、私を大事にしてくれるお兄ちゃん的存在だ。
「いってぇ……てめー何すんだよ銀時…」
晋助が転げ落ちる。頭を打ったようで痛そうに頭を押さえていたが、桜花と銀時の体制を見て目が覚めたようだ。
「おい、桜花。早朝から銀時とそんな体制…いくら幼馴染でもそろそろ気ぃ付けねぇと…なぁ!銀時!」
晋助が銀時を蹴り上げる。朝からケンカ勃発。私はまた始まった、と思いながらため息をつき、タンスから着替えを取り出した。