第4章 四番隊のお仕事1
「こ、こんにちは、更木隊長。お邪魔してます。」
彼の眼光に射すくめられ震え上がりそうになるのを堪えて挨拶する。
(ひぇぇぇー!怖い!)
「おう、優姫か。入れよ。」
優姫に気づくと思いの外柔らかな声音で招いてくれた。
(良かった、機嫌が悪いわけじゃないみたい。)
「剣ちゃんおやつだってば、優ちゃんがどら焼き作ってくれたよ。」
「あぁ、悪かったな。あんまりやちるを甘やかさなくていいぞ。」
あ、目がちょっと優しい。
それにさっき名前で呼んでくれた。
何故だろう、すごく嬉しい。
「あの、お茶を入れてきます。」
頬が赤くなりそうで、隠すように部屋を出た。
前回来たときに昼御飯を作ったから、十一番隊舎の台所にも慣れてお茶くらい入れられる。
熱めの番茶にしよう。
お湯を沸かして準備して更木の部屋へ戻る。
「あれ?やちるさんは?」
「部屋に戻った。茶はいらないんだと。」
「そうですか。」
やちるさんが置いていったのか更木隊長の前にどら焼きが二つ置かれていた。
「お茶をどうぞ。」
「あぁ。」
更木は薦められたお茶を飲みながらモソモソとどら焼きを頬張る。
甘い物嫌いじゃないかな……
上手く作れたと思うけど、大丈夫だったかな?
ついチラチラと更木隊長の顔を伺ってしまう。
「心配しなくてもちゃんと旨いぜ。」
こっちを見てニヤリと笑う更木隊長。
考えてることを読まれてしまったみたい。
「あ、ありがとうございます。」
恥ずかしくてまともに顔を見れなくなってしまった。
真っ赤になって慌てて俯く優姫は更木がいつになく柔らかな眼差しで自分を見つめていることに気付かなかった。