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その胸に抱くのは~BLEACH~

第14章 喪失


ズズズ………ズズ…………



畳を擦る衣擦れの音。
ゆっくりと身体を起こす優姫が、涙に濡れた顔をゆっくりとあげた。




『………っ!……ひぃっ‼』





西園寺家の若君が後ろへ飛び退く。
一気に血の気が下がった顔は蒼白になり、悲鳴を漏らした唇は震えガタガタと歯が鳴る。
西園寺家の当主は目を見開き動けずにいた。





『橘さんを埋葬致します。遺体をお引き渡し下さい。』




ユラリと立ち上がった優姫に表情は無い。
ゆっくりと立ち上がる。
正面に座る二人を見下ろす。
その目が……
見据えられただけで戦慄する。




『勝手に連れていけ。』





それだけ告げて西園寺家の当主は部屋を転がり出るようにして去った。
しばし呆けていた若君も這うようにして逃げ出す。
その場に残った男たちも後退りしながら優姫から距離をとる。




静かな表情の中に、全てを憎む暗い瞳。
ビリビリと空気が震えるほどの殺気をまとう少女は橘の身体を背負う。


部屋を出た所で以前から良くしてくれた年配の女性使用人に会った。
橘を背負う優姫を見て顔を歪めた。




『橘さん、死んだのかい?ずっとあんたのこと気にかけて可愛がって……』




涙を流す彼女の顔を無表情で優姫は見つめる。
さっきまで流した涙はもう乾いてしまった。




『これ、橘さんから預かって……自分に何かあったら今日渡してくれって……こうなるってわかってたんだね。旦那様は非情な方だから、長年従って尽くした橘さんにまでこんな仕打ちを…………』




懐から出した手紙を優姫の着物の懐へ押し込む。
優姫は泣きながら元気でと告げる女性の顔をぼんやりと眺めていた。





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