第14章 喪失
気がつくと、橘さんのお墓の前に佇んでいた。
手には酷いマメが出来て、破れた皮膚からは血が流れていた。
いつの間に埋葬したのか……
悲しくて、悲しくて……
頭がおかしくなったのかも……
いっそのことそのまま狂ってしまえたらよかったのに。
カサリッ………
胸元で渇いた音がした。
目をやると手紙……
そう言えば橘さんからって言われて押し込まれたような気がする。
既に開けられていた封から手紙を出して読む。
優姫へと始まる手紙は懐かしい几帳面な字で綴られている。
ずっと自分の為に耐えていた事を気づかなくてすまなかったと……
これからは思い通りに生きろと……
自分が死ぬことで苦しまないでくれと……
『苦しむななんて、無理なこと言わないで下さい……』
枯れたはずの涙がまた溢れて頬を濡らしていく。
私の為にと差し出すものが命だなんて、残酷すぎる。
この胸の痛みに耐えて生き抜くなんて……
その日は声をあげて地に臥したままいつまでも泣き続けていた。