第14章 喪失
一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
動きを止めて思考する優姫を冷たい目が変わらず見つめる。
ようやく理解が追い付くと優姫は弾けるように頭を畳に押し付けた。
『はい……はいっ!必ず、必ず死神になります!!』
許されたのだろうか。
喜びで涙が込み上げそうになった時、バタバタと数人の足音がした。
何事かと顔をあげると、3人の男に取り囲まれ身体を畳に押さえつけられた。
いったい何事なのかと頭だけ動かして周りを見回す。
恐ろしく冷たい目で旦那様が見ている。
後ろに控えた若様がニヤニヤと笑っている。
俯いた橘さんの顔が見えない。
何をされるの?
まさか、この男たちに身体をいいようにされるのか?
最悪の事態を想像して身体が芯から冷えていくような感覚が襲う。
助けを求めたくて必死な気持ちで橘さんを見る。
ゆっくりと顔をあげた橘さんが……笑った……
優しい目で、愛おしい者を見るように笑っている……
どうして……?
『優姫、お前の罪は問わない。死神になって恩に報いろ。死神になった後は息子の嫁として迎えてやろう。死神になれば元は孤児でも構わんだろう。だが……』
勝手な事を言い募る旦那様の言葉は半分も頭に入らない。
この状況は何を意味するのか?
嫁?若様の?
何故押さえつけられているのか?
必死にもがいて拘束から逃れようとするが男3人の力には敵わない。
橘さんはその場から動かない……