第14章 喪失
『お前が幼女趣味であの小娘に手を出してるって噂を立ててやるって脅したんだよ。さすがのお前でも親父の妾にしようとしてる女に手を出してるなんて洒落になんねぇよな。』
ゲラゲラとおよそ貴族らしくない下品な笑い声が響く。
『お前の為にって必死な小娘を散々オモチャにして楽しませてもらったぜ。まぁ、最近は痛みも感情も無くなったみたいに反応しないからつまらなくて遊んでないけどな。』
私の為に……?
あんなに頑なに話さず否定して……
身体中痣だらけにしても痛そうな素振りすら見せずに耐えていたのは私のためだっただと?
気づきもしないで私は何という愚か者なのだ‼
『親父が妾にして、ガキでも生ませた後に飽きたら俺が可愛いがってやるよ。その後だったら、お前にくれてやるよ。それまであの小娘が壊れなきゃいいけどな。』
『なんて事を……!』
『精々綺麗にしてやれよ。親父は明日にでも連れてこいってさ。』
ゲラゲラと笑い声を響かせて忌まわしいあの男は去っていった。
怒りで消し飛びそうな理性を総動員させる。
今ここであの男を殴りに行っても優姫を救い出すことは出来ない。
すぐに準備をしなければ……
夜部屋を訪ねた私に驚いた顔をした優姫はすぐに状況を察したらしい。
用意できるだけの金と僅かな着替えなどの荷物を渡す。
私の身を案じる優姫の背中を押して何とか屋敷から逃がした。
優姫ならば大丈夫だ。
頭のいい子だ、試験の日まで見つかることは無いだろう。
無事に試験を受けて合格したら、自由にしてやらなければ。