第14章 喪失
それから数年。
諦めたように感情すら無くして人形の様に仕事をこなす優姫を見ているのは私も辛かった。
そして優姫は少女から女性へと成長しつつあった。
旦那様が優姫を拾ったときに予見したように美しい女性に。
このままでは優姫は旦那様にその身体を無惨に散らされてしまうだろう。
わずかな時間稼ぎにしかならないだろうとわかっていてもその日がくることを引き伸ばしたかった。
髪を伸ばして、前髪は顔がかくれるくらいまで無造作に伸ばさせた。
着物も他の使用人の古着や質の悪い物をあえて着るようにさせた。
顔や着物から出た肌は煤や泥で汚させて、屋敷では旦那様に合わないように仕事をさせる場所を工夫した。
優姫もこの頃には解っていたのか疑問を口にすることなく従ってくれた。
もう少しで、もう少しで優姫を開放してやれそうだという頃突然知らされた真実。
『よう、橘。』
『若様、私の私室にいらっしゃるなんて珍しいですね。どのようなご用でしょうか?』
『親父からの伝言だ。お前が目をかけて可愛がってる小娘はそろそろ準備ができる頃だろうから、味見をさせろってよ。』
『……っ!』
動きを止めた私をニヤニヤと見下ろしながらあの男は続けた。
『あいつ、可愛いよなぁ。お前が絆されたのもわかるぜ。必死にお前の事を守ろうとして、俺にどれだけ痛め付けられても耐えて……なぁ?睨み付ける顔なんかゾクゾクするぜ。健気だよなぁ、お前が追い出されないように助けも求めず頑張ったよ。』
『……?どういう、事でしょうか?』