第14章 喪失
私の事が心配だからと熱に苦しみながらも弱々しい声で懇願する優姫に絆されて目を瞑る事にしてしまった。
今回限りだ。
いつでも目を光らせて優姫を守る。
二度とこんな目には合わせない。
その小さな身体につけられた痛々しい痣の全てに湿布を貼りながら心に誓った。
この日の自分の甘さがその後の優姫を更に苦しめてしまうことになるなどとは考えもしなかった。
その後優姫は私の目の届かない所で何度も痛めつけられた。
その小さな身体にいくつも痣を隠して働いていた。
痛みを堪えながら、心の苦しみを抱えて、そしてまた笑わなくなった……
私が何度も問い詰めても優姫は話さなかった。
何故だ……
何故話してくれないんだ!
優姫が否定する以上あの男にも下手に手出しは出来なかった。
愚か者でも旦那様にとっては一人息子、貴族の跡取りを使用人の私が追い出す事は出来ない。
前回のように馬鹿息子の不祥事をつかんで旦那様の心を動かさなければ……
優姫は守りきれない私に愛想をつかせて話さないのか?
大人を信じられなくて助けを求めなくなったのかと思った。
しかし、以前のように勉強を見てやったり、変わらず気にかけて可愛がればどこか嬉しそうで……
愚かな私は優姫の心が解らなかった。
ただ見守るしか出来なかった。
大切な、大切な女の子だったのに。