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その胸に抱くのは~BLEACH~

第14章 喪失


旦那様が気まぐれに拾った少女は子供らしくない子供だった。
大人よりも周囲に気を使いながら健気に働く姿がどうにも気になってちょくちょく世話を焼いた。
人形の様に綺麗な顔立ちだがその表情はあまり変わらず、瞳はゾッとするほど凍りついていた。
心に大きな傷があるのだと解った。



旦那様がいつもの悪い癖で妾にしようなどと言っていた少女だ。
あまり情をかけすぎてはいつか自分の首を締めるとわかっていたが、どうにも放っておけなかった。
年齢の割りに賢く、勉学も親が教えていたのか漢字もいくつか読めるようだった。
何気なく、勉強を教えてやろうと言えばその瞳に僅かに感情が灯った。
私の顔を見上げた瞳にキラキラとした光が宿ったように見えたのだ。


あぁ、喜んでいるのか……


無性に可愛くて仕方なかった。
緩みそうになる頬に必死に力を入れていたから変なしかめっ面になっていただろう。
自分も所帯を持っていればこんな娘がいたのかもしれないなどと思い始めれば、情はどんどん深くなるばかりだった。



仕事が終わった後、部屋に呼んで勉強を見てやる日が数日続いた頃だっただろうか……
少し難解な問題が解けたことを誉めて頭を撫でると、少女は花の蕾が綻ぶように小さく笑った。
胸の奥が熱くなるような、不思議な喜びに満たされたのを感じた。



『あの、使用人でも……死神に、なれますか?』



ある日ポツリと漏らした彼女に、否定の言葉を告げることは出来なかった。
たくさん学んで頑張ればなれるだろうと応えた私に向けた笑顔を見たあの日、密かに自分の胸の中だけで誓った……


必ず夢を叶えさせてあげるよ……





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