第14章 喪失
西園寺家の捜索に見付からないように逃げながら試験までの日を過ごした。
橘さんは大丈夫なのか?
こんな風に出てきてしまって良かったのだろうか?
気になってはいたけれど、これが最後のチャンスだと思った。
これを逃せば二度と死神になる道は閉ざされてしまうだろうと。
試験の日……
羨望と絶望の気持ちを抱えたまま見つめるしかできなかったあの門を潜った時の胸の高鳴りを忘れない。
あの優しい死神にもう一度逢いたい……
あの人の元に仕えてこの命を捧げたい……
切ない気持ちで一杯になりながら、震える手で試験に答案を書いたことを忘れない。
試験の結果が門前に貼り出された日……
自分の名前を見つけた時の胸を埋め尽くした一生分の喜びを忘れない。
弾むような気持ちで、この喜びを伝えたいと走ったあの道の景色を忘れない。
それが絶望に続く道とは知らずに走っていた……