第14章 喪失
空が明るくなる頃まで痛みと悔しさで眠ることはできなかった。
うとうとし始めたところで起こされた優姫はノロノロと身体を起こした。
『大丈夫かい?具合が悪そうだね。熱があるじゃないか!今日は休んでいな。』
隣で寝ていた女性使用人が優姫の額に手を当てて顔をしかめる。
クラクラと目が回ると思ったら熱が出ていたのか……
身体もズキズキと傷んで動けない。
寝ていなさいと言われるまま再び布団に横になる。
『後から薬を持ってきてあげるから、ゆっくり休んでなさい。』
遠ざかる足音を聞きながら目を瞑った。
仕事を休んでしまった……
みんなに迷惑をかけてしまった……
申し訳なさに涙が出そうになるのをこらえる為にギュッと瞼に力をいれた。
暫くそうしていたらうとうとと微睡んでいたらしい。
ひんやりとした手が優しく額に触れた。
ハッとして目を開けると心配そうに覗きこむ橘さんの顔。
『起こしてしまったか。具合が悪いと聞いた。ちょうどいい、食事をとって薬を飲みなさい。起き上がれるか?』
『はい、休んでしまってごめんなさい……』
『気にしなくていい。まだ熱もあるからお粥を用意させた。食べなさい。』
『はい、あっ……っ!』
身体を起こそうとして痛みがはしる。
油断していて顔に出してしまった。
しまった……そう思って橘さんの顔を見れば案の定、見つめる顔が険しくなっている。