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その胸に抱くのは~BLEACH~

第14章 喪失


結局若様はその日から離れに住むことを許された。
お世話をする使用人が何人も庭や離れで怒鳴られたり殴られているのを優姫は遠くから見かけるようになった。

暫くは若様に近づかないようにと優姫も避けて過ごしていたので直接的な被害はなかった。




『今日もありがとうございました。』

『かまわないよ。明日も朝早いだろう、早く戻って休みなさい。』

『はい、お休みなさい。』




いつも通り橘さんに勉強をみてもらって使用人が寝起きする大部屋へ帰る時だった。
優姫は襟首を強い力で引っ張られて引き倒された。




『ぐっ……はっ……』



引っ張られた着物の襟首が締まって呼吸が止まる。
そのまま引きずられてどこかへ運ばれる。
手足をバタつかせてもがくけれど、引っ張る力は緩まない。
意識が薄れて気絶する寸前、やっと襟首を離されて肺に空気が入る。




『げほっ……ごほっごほっ……』



目に入ったのは埃っぽい床だった。
使っていない物置の様な小部屋に連れてこられたことに気がつき顔をあげる。
目の前に立ち、冷たい目で見下ろしている人物を確認した優姫は背筋に冷たいものが走るのを感じた。




『わ、若様……何のご用でしょうか?』




慌てて目線を床に戻し、できるだけ取り乱さずに声を出す。
自分の鼓動がドクドクと全身に響くように鳴っている。
指先と唇が震えるのを止められない。
いきなりこんな扱いを受ける心当たりが無いが何か粗相をしてしまったのだろうか?
突き刺さるような視線と沈黙が不安を掻き立てる。



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