第4章 四番隊のお仕事1
「ここだよー。今剣ちゃんが稽古してるからちょっと待ってねー。」
隊舎の中にかなりの広さの訓練場がある。
やちるが見た辺りに目をやると、一人の長身の男が十人ほどの隊士に囲まれている。
初めてでも一目で解る。
更木隊長だ。
周りを囲む隊士たちもかなりの霊圧を放っている。
ビリビリと空気が震えるみたい。
でも、更木隊長は……
囲まれた更木はつまらなそうにゆっくりとその手を斬魄刀にかけた。
瞬間、隊士たちに恐怖に近い緊張が走る。
恐怖を振り払うように膨れ上がる霊圧と殺気。
それを感じた更木が笑った……
一閃、そんな感じだった。
目でその太刀筋を追うことも出来ない。
そう、十人に囲まれたって関係ない。
更木隊長の霊力はそれよりもはるかに強い。
鍛え抜かれた身体に迸る殺気。
聞いた話では更木隊長は斬魄刀の始解も卍解もしないと。
その霊力だけでこれほど強い……
優姫はその圧倒的な強さに目を奪われて離せない。
腹から喉へ焼けつくような熱さが込み上げる。
ハッ…ハッ…ハッ…ハッ……
さっきから呼吸が上手く出来ない。
沸き上がる感情に振り回される。
そう、これは明らかに渇望……
こんな風に、強くなりたい。
私、誰にも負けない強さが欲しい!
心の奥で叫んでる私がいる。
あの日、翠光の手を取る瞬間に父の顔が浮かんだ。
父が望む私になろうとして精神世界で翠光の手を取った私が望んだのは癒しの力。
だからこんな風に思うのは間違ってる。
その時こっちを見た更木隊長が笑った気がした。