第14章 喪失
※少し主人公の過去編になります。オリジナルキャラが出てきます。
『お前、綺麗な顔をしているねぇ……親は?いないか……いればこんな所で野垂れ死にしそうになんてなっていないよねぇ……』
朦朧とする意識の中、思いきり髪を掴まれ顔を上げさせられた優姫はそんな言葉を聞いた。
父親が亡くなって、あの優しい優しい死神の元を離れて数日経った。
流魂街でも治安がいい地区に送り届けてもらったのだろうが、やはり十歳にも満たない女の子が一人で生きていくのは難しかった。
食べることも出来ず、歩けなくなった優姫がこのまま父の処にいくのだろうかと覚悟した時だった。
掴まれた髪が痛い……
綺麗な高価そうな着物を着た老人……
蛇のような目だ……
じっと見られて身体がすくむ。
『橘……この娘拾って行くぞ。』
無造作に掴んだ髪を離して老人は後ろに控えた人物に命じた。
優姫は目だけを動かして後ろの人物を見る。
神経質そうな中年の男性が進み出ると、動けない優姫を肩に担ぎ上げた。
これで助かったのか、自分はどうなってしまうのか朦朧とした意識では考える事が出来ず優姫はなすがままに老人の屋敷へと運ばれていった。
屋敷に着くと無造作に床に放り投げられた。
打ち付けた背中が痛い……
もう指先も動かせない。
ぐったりとした優姫の頭上で話し声がする。
『橘、この娘しっかり仕込め。数年たてば驚くほど綺麗な娘になるだろう。仕上がりによっては儂の妾にしてやっても良いなぁ。』
下卑た笑い声が遠ざかっていく。
老人がいなくなると橘と呼ばれていた優姫を運んだ男性がすぐそばに膝をついた。