第14章 喪失
私の言葉を遮ると、卯ノ花隊長は場所を変えましょうと言って自室へ向かって歩き始めた。
隊長の部屋で向かい合って座ると、卯ノ花隊長は重い口を開いた。
「今朝のことです。藍染隊長の遺体が発見されました。犯人は不明。今日は私は1日藍染隊長の検死をしていました。更木隊長の治癒に向かえなかったのもそのためです。」
卯ノ花隊長は真っ直ぐ私の目を見つめた。
「犯人はわかっていません。旅禍の仕業なのかどうかもわかりません。だからこそ、旅禍を捕らえて真実を明らかにする必要があります。ただ、隊長格の殺害は隊士たちに動揺を招きます。ただでさえ混乱している今は末端の隊士たちにまで報告はしません。優姫も今は黙っていてください。」
ぱたり、ぱたり……
正座した脚や膝に乗せた手に透明の滴が、瞬きもせず卯ノ花の瞳を見つめ返す優姫の瞳から流れ落ちる。
呆けたように動かない優姫を卯ノ花は暫く見つめる。
「優姫‼あなたは何者ですか?己の任務もこなせないのなら、自室に待機していなさい。迷いのある状態で戦場に赴いても邪魔です。仲間に危険が及びかねません。今日はもう下がりなさい。」
いつになく厳しい声をあげた卯ノ花に優姫は弾かれたように立ち上がる。
「申し訳ありません……気持ちを……切り替えて明日は任務に当たります……失礼します。」
真っ青になりながらも気丈に振る舞おうとする優姫を卯ノ花は気遣わしげに見送った。