第14章 喪失
隊舍の中に入りやちるさんが下ろした女性に優姫が近づく。
顔を見れば自分とそう変わらない年齢だろうか?
可愛らしい子だ。
彼女と一緒にいた旅禍の少年は涅隊長と戦闘になって、居合わせたマキマキさんが少年から託されて彼女を連れて逃げたらしい。
鬼道を使って彼女を回復させる。
「んっ……」
彼女の瞼が痙攣して眉をしかめる。
ゆっくりと瞼が開く。
彼女と目が合う。
「大丈夫ですか?」
「っ!……はいっ!あれっ?ここは?……そうだ石田君っ!石田君は?」
「落ち着いて下さい。」
「あの場からあんただけつれて逃げたんだよ。多分あんたといたあの男は捕まったんじゃないか?」
後ろからマキマキさんが声をかける。
「そんな……」
愕然として言葉を無くす彼女の肩をそっと抱く。
「大丈夫、あなたたちは強いから、きっと生きていますよ。大丈夫。あなたが無事でいることが仲間の為になるはず。しっかりしてね。」
優姫の肩を抱いた手に彼女が手を重ねてギュッと握ってくる。
涙を浮かべながら小さな声でありがとうと言った。
彼女は井上織姫さんという人間の女の子。
普通の人間の筈なのに不思議な能力がある。
彼女の治癒能力は優姫も人の事は言えないが独特だった。
現世での朽木ルキアさんとの事や助けに来た経緯を簡単に聞いた更木隊長が、黒崎一護と再会するために旅禍と一緒に行動すると決断した。
「私は一度四番隊に戻って様子を確認します。旅禍が捕らえられている場所がわかったらやちるさんに連絡を入れますね。」
「うん、優ちゃんよろしくねー」
「ついでにお前も身体を診てもらえ。俺がかなり消費させちまったからな。」
更木隊長がいつものように少し乱暴に頭を撫でる。
翌朝合流する事にして優姫は四番隊の隊舍に向かった。