第14章 喪失
暫く移動していた時、隣のやちるさんが声をあげた。
「あれっ?そこの道の向こうに居るのって……」
「あぁ?」
更木隊長が立ち止まる。
やちるさんが示した方角に向かうと一人の隊士が走ってくる。
腕に女性隊士を抱えている。
怪我人かな?
「とーーぅっ!」
隣のやちるさんが更木隊長の背中から隊士の前に飛ぶ。
「マキマキ、その子旅禍だよね?」
「草鹿副隊長!!」
「なんだと?」
旅禍という言葉に反応した更木隊長がその隊士に近づく。
死魄装の隊章は十二番隊のものだが、各隊に健康確認に出向いている優姫も見たことのない顔だ。
そして何より独特の霊圧と魄動は死神のものと違う気がする。
「詳しい事は落ち着ける場所で聞く。隊舍に戻るぞ。やちる、女を運べ。」
「ほいほーい!」
マキマキと呼ばれた隊士からその女性を受けとると、肩に担ぎ上げたやちるさんはやはり飛ぶような早さで走って行く。
更木隊長の背中に掴まっている優姫の後ろでマキマキは必死に走りながら叫んでいた。
「待って下さいよぉーーーー!」
十一番隊舍に着くと中に一角さんと弓親さんがいた。
「あ、隊長と副隊長。やっぱりこちらにいらしたんすね。」
一角さんが当然のように言う。
「一角さん、抜け出してきたんですか?」
「あん?優姫の治療が良かったからもう治ったんだよ。」
ケロリと言ってくれるがそんな筈ない。
でも、更木隊長といいこの人たちはそうなのだ。
大人しくベッドに寝かされているような人たちではない。
護廷十三隊の中でも更木隊は戦闘部隊なのだから。