第13章 虎の愛
大分時間がたっただろうか……
更木はほぼ傷が塞がり霊力も戻ってきている事に気付く。
目を開けて上体を起こす。
淡い翡翠の光が包み込む空間の中に優姫と自分だけが浮かんでいる。
傍らの優姫に目を向けると俯いている。
更木は優姫の変化にすぐに気がついた。
はぁっ……はぁっ……
肩で浅い呼吸を繰り返している。
何かに耐えるように小刻みに震える身体。
「おい、優姫。」
華奢な肩に手を伸ばそうとした瞬間、翡翠の世界が消えて優姫が崩れ落ちる。
更木が慌てて抱き起こす。
腕の中の優姫は何かに耐えるように強く目を瞑り、苦しそうな呼吸を繰り返している。
長く斬魄刀の力を使いすぎたせいで身体に負担をかけたのか?
「優姫、苦しいのか?くそっ……どうなってやがる……」
「更木隊長……」
目を閉じたまま優姫が呼ぶ。
「すみませ……」
「いい、しゃべるな。卯ノ花を呼ぶ。」
「違うんです……」
「ああ?」
ようやく目を開けた優姫の顔を見て更木は息を飲む。
(…っ!なんて顔してやがる……)
知らず、肩にかけた手に力が入る。
染めた頬に潤んだ瞳、僅かに開いた唇から覗く赤色。
零れる吐息は苦痛ではなく甘い響きを含んでいる。
「どういう状況だ?」
「斬魄刀の力の使いすぎと、更木隊長の霊力に充てられてしまってるだけです。少しすれば収まります。」