第13章 虎の愛
「やちるさん、治癒に少し時間が掛かりそうです。ここより安全な室内に移動させたいのですが……」
「わかった。うちの隊舎の剣ちゃんの部屋までいこう。」
更木隊長の大きな身体を片手で軽々と担ぎ上げて飛ぶやちるさんに驚愕しながらも慌てて後を追う。
更木隊長の部屋に着き、とりあえず敷布団だけ敷きその上に更木隊長を下ろしてもらう。
「清めよ、翠光!」
すぐに斬魄刀を抜いて力を解放する。
淡い翡翠の光が包み込む。
「優ちゃん、後はお願いね。何か呼ばれてるからちょっと行ってくるよ。」
光の外からやちるさんの声が聞こえた。
返事をする前に部屋を出て行ったみたい。
山本総隊長と日番谷隊長から召集とかいってたかな?
シンっと静まり返る隊舎。
昨日と今日でこの十一番隊は壊滅状態だ……
更木隊長の顔に視線を戻す。
少し血の気の失った顔。
初めて見る更木隊長の敗北の姿と、まだ弱い霊力に不安になる。
いつも大きく開いた死魄装の袷から今日は大きな斬り傷が覗く。
無傷の方の胸板に手を当てて呼吸や体温を確認する。
そうしていないと不安に押し潰されそうになる。
「更木隊長……」
優姫は自分の霊力全開で斬魄刀の力を使う。
全神経を集中して治癒にあたる。