第13章 虎の愛
昨日病室に更木隊長と現れた優姫の姿を思い出す。
更木隊長に手を握られ、全身で庇われ護られていた。
更木隊長の優姫への想いの深さが見てとれた。
あの隊長がこうも女性を気にかけることは今までになかったことだ。
副隊長のやちるのことは家族のように大切にしているが、優姫は別だろう。
俺に勝ち目あんのかなぁ……
僅かに高揚しているであろう優姫の横顔を見ながら、一角はぼんやりとそんな風に思った。
いや、隊長相手だからって諦めるつもりはない。
しかし更木は自分にとって越えてやろうとか、倒したいとかの次元を越えてしまっている。
この人の元で闘って散っていけたら幸せだと思う。
更木の男気に優姫が惹かれる気持ちもよくわかるだけに、優姫が自分を選んでくれることはない気がするのだ。
だからって消せる気持ちでもないしなぁ……
どうにもならない気持ちを胸に留めて一角は苦笑いを浮かべた。
「隊長…もしかしなくても…圧されてる…?」
弓親の声にハッと我にかえる。
「…ああ。」
「まずいんじゃない?このままじゃ幾ら隊長でも…」
「バカ野郎、あの人が敗けると思うか。十三隊最強更木剣八!俺達はそれを信じてあの人の下についてんじゃねえのか!!敗けねえさ!」
力強く一角が言い切るのを優姫は眩しいものを見るように見つめる。
信念をもった男の強い眼光に瞳を奪われていた。