第12章 逢瀬
部屋を見渡しながら優姫が考えるような表情になる。
「身体の力が急に抜けて立っていられなくなったんです。」
「そうか、君の霊力は特殊だからかな。こんな症状は初めてだ。君はほぼ仮死状態だった。一度、斬魄刀の翠光についても調べてもらうほうがいいな。」
「はい、落ち着いたらそうします。ところで藍染隊長はどうしてここに?」
無邪気に問いかけてから自分と藍染が襦袢姿でひとつの布団の中にいることに気づいた優姫は途端に真っ赤になる。
五番隊に出向していた時は抱き合って肌を重ねたこともあるのに、いつまでも慣れない様子の優姫に笑みがこぼれる。
「君の霊力が極端に小さくなったからね、いてもいられず探しに来たんだよ。意識が戻って良かったよ。」
「わざわざすみませんでした!」
「大切な女性のためならどこへでもいくさ。」
朗らかに笑いながら優姫の頭を撫でると、布団から出て死魄装を身につける。
「このまま僕は戻るけど、優姫は朝までおとなしく休みなさい。こんな所にしか運べなくて悪かったけどね。」
「いえ、助かりました……藍染隊長、怪我をしないように気をつけて下さい。来てくださってありがとうございました。」
静かに微笑む優姫に胸が引き絞られるような気持ちになる。
もう一度屈んで優姫に口づける。
「これだけは覚えていてくれ。君を愛している。僕は必ず君を手にいれるよ。」
いい子にしているんだよ、と言い置いて藍染は出ていった。
その背中を見送った後、優姫は静かに目を閉じた。
ほんの僅かな逢瀬でもこんなにも気持ちが落ち着いて暖かくなる。