第12章 逢瀬
静かな寝息をたて始めた雛森を布団へ横たわらせ、掛け布団を丁寧に掛けた藍染は死魄装に着替えると部屋を出た。
後ろに迫る人影に振り返らずに手を上げて制する。
「次の計画に入る前に少し用がある。控えていてくれ。」
普段の声とは違う低く冷たい声音だった。
その言葉に足を止めた市丸が無言のまま頭を下げて去っていく。
隊舎から出た藍染は意識を研ぎ澄ませる。
「優姫……どこだ?」
昼頃から優姫の霊圧が極端に小さくなっていた。
瀞霊廷に侵入した旅禍たちは隊士の命を奪うような連中ではない。
しかし怪我でもしているのか微弱な霊圧は位置ははっきりしないもののまったく動いていない。
優姫が怪我……
想像しただけで胸がざわざわと落ち着かない。
早く無事な姿を確認しなくては。
微弱な霊圧の方向に瞬歩で進み辺りを探す。
懺罪宮のすぐ近くまで来ると微弱な彼女の霊圧をはっきり察知出来た。
建物の影の路地に倒れて動かない優姫を目にした瞬間、藍染は自分の血の気が引くのをはっきりと感じた。
「優姫!!!」
駆け寄り華奢な身体を抱き起こす。
「優姫、優姫!!」
呼び掛けるが反応が無い。
顔は血の気が無く紙のように真っ白になっていて、極端に体温が低い。
氷のように冷たい頬を軽く叩くが起きる気配がない。
「何だこれは……これではまるで仮死状態だ……優姫目を開けるんだ。」
さっきから心臓がドクドクと痛いくらい早鐘を打っている。
このまま彼女を失うかもしれないという想像にゾッとする。
恐怖……これが恐怖か……
いまだかつて感じたことの無い感情に支配される。