第11章 旅禍
優姫にはよくわかった。
どれ程辛くても、それが現実。
自分も孤児になってからは同じような暮らしをしていた。
貴族の使用人に『拾われる』までは。
そう、私も犬と同じ……
彼らは野良犬だった。
私は飼い慣らされた犬……
貴族の家に使用人として拾われたのはたまたまだった。
顔立ちが綺麗だったから。
感情を圧し殺していた優姫は何をされても従順だったから。
蹴られても、殴られても泣き叫ばないから。
そうやってなんとか生きた。
どん底から這い上がるために、死神になった。
その後ルキアさんと阿散井副隊長は真央霊術院に入り、鍛練を重ねていたある日ルキアさんを迎えにきた人物がいた。
貴族の朽木家が養子に迎え入れると……
その時初めて対峙した白夜様に阿散井副隊長は圧倒されてしまった。
桁外れの霊圧に目も合わせることができず、気乗りしないルキアさんを後押しした。
彼女に家族が出来るのだと、喜ぶことが仲間の自分にできることだと。
「…だが今にして思えば、ビビッてただけなのかもな……俺は…まったく…骨の髄まで野良犬根性が染みついてやがるんだ…厭になるぜ。」
自嘲した阿散井副隊長は黒崎一護を睨む。
「星に向かって吠えるばっかで飛びつく度胸もありゃしねえ…」
阿散井副隊長は突然黒崎一護の胸ぐらを掴みかかる。
黒崎一護も圧倒されたように動かず、静かに阿散井副隊長の言葉に耳を傾けている。
「…俺は…結局朽木隊長に…一度も勝てねえままだ…ルキアがいなくなってからずっと…毎日死ぬ気で鍛練したがそれでもダメだった…あの人は遠すぎる…」