第11章 旅禍
黒崎一護の服を強く握りしめながら阿散井副隊長は続ける。
「力ずくでルキアを取り戻すなんて…俺にはできなかったんだ…!…黒崎…恥を承知でてめえに頼む…!!…ルキアを…ルキアを助けてくれ…!!」
まさに血を吐くような叫びだった。
優姫の胸も締め付けられるように傷む。
違うの……あの方は……誰よりもルキアさんを……
溢れる涙を止められずにいた。
「………ああ…」
静かな、でも優しい声で黒崎一護が応えた。
そして力尽きた二人はその場に崩れ落ちて意識を失った。
「一護!!!」
もう一人の旅禍が黒崎一護に駆け寄る。
優姫も駆け出す。
「花太郎さんっ!」
「瑞原さん!?どうしてここに?」
「花太郎さんが拐われたのを見たので、助けに……でも……」
優姫が言葉を濁し、花太郎は苦い顔で頷く。
「ごめん、ぼくは自分で彼らと……」
「行って下さい。すぐに誰か来ますから、見つからないように。」
強く頷く優姫の顔を見て花太郎はホッとした表情になると黒崎一護の元に行く。
その時こちらに向かう数人の霊圧を感じた。
「誰か来ます!!三人…いや四人…五人かも」
花太郎の声に旅禍は黒崎一護を担ぎ上げる。
優姫と花太郎は目で合図をすると、互いに違う方向へ駆け出す。
阿散井副隊長には申し訳無いけれど、私も今は見つかって尋問を受ける場合ではない。
自分の意思は決まった。
旅禍の彼らとは別にルキアさんを助けるために動かなければ!
黒崎一護は花太郎さんがいるから大丈夫だろう。
傷は深いが、花太郎さんは治癒力に長けている。
時間があれば回復するだろう。
とりあえず私は本隊に戻って状況を確認しよう。