第11章 旅禍
阿散井副隊長が振り上げた腕に力を込める。
「俺に殺されるてめーにはな」
ゴッ……!!
阿散井副隊長が斬魄刀を振り下ろした衝撃で空気が震える。
その衝撃で爆風が起こる。
堪らず優姫が走り出し駆けつけようとした……
ガ……!!!
肩口に振り下ろされた剣先を黒崎一護が素手で掴んで止めたのだった。
(そんなっ!普通なら手から腕が割けてしまう。掴んで止めるなんて、どれだけの霊力を!?)
走り出した足を止めて優姫は息を飲んで見守る。
「…待たせたな恋次…覚悟だ。」
顔をあげた黒崎一護の顔には阿散井副隊長に渾身の一撃を躱された時の迷いも戸惑いも無い、瞳に宿る闘志のみがあった。
覚悟……その一言が優姫の胸に刺さる。
「てめえを斬るぜ。」
低く、凄みのある声。
さっきとは人が変わったかのような目付き。
桁違いに上がる霊力……
上がり続ける……!
阿散井副隊長が身体を躱して距離を取り斬魄刀を構えるが、その瞬間斬魄刀は無惨に叩き割られ、左肩が割けて血が噴き上げる。
かろうじて膝をつくことはしないが、もう身体が動かないのは明らかだ。
「おおおおおおおお!!!」
阿散井副隊長が咆哮する。
空気を震わせて、彼の無念が伝わってくる。
そして静かに彼は語り始めた……
ルキアさんと阿散井副隊長は子供の頃に出会って一緒に過ごしてきた仲間だった。
数人の子供達で寄り添いながらゴミ溜めみたいな街で助け合い、家族として生きてきた。
貧困と暴力の街で子供だけで生きていく。
それは並大抵の事ではない。
二人が出会って十年がたつ頃には他の仲間は全員死んだのだと……