第11章 旅禍
壁に空いた穴から黒崎一護が出てくる。
額から派手に血を流している。
更に阿散井副隊長が刀を繰り出す。
周りの建物を破壊しながら二人は更に戦いを続けている。
花太郎さんももう一人の旅禍も二人の戦いを固唾を飲んで見入っている。
その隙に大分近くまできた。
花太郎さんの表情を確認できるところまで来た。
花太郎さん、大丈夫かな?
隙を見て花太郎さんと逃げ出せるかな?
優姫はそろりと花太郎の様子を伺う。
その目は明らかに黒崎一護を見つめて……その身を案じている。
やっぱり……
旅禍に脅されているのだと思いたかった……
脅されて、身の危険を感じてここまで案内してきたのだと……
花太郎さんはルキアさんを助けるために、旅禍に加担している。
それは間違いなく背任行為……
罪を犯してもなお、助けたいの?
優姫はぎゅっと目を瞑る。
本心では、誰よりもルキアさんを助けたいと思っているであろう美しい人の顔が浮かぶ。
私はどうしたらいい?
あの方の為に、私ができることって?
「…しぶとい野郎だ…そんなにルキアを助けてえか…」
「…バカ野郎…“助けてえ”んじゃねえよ…“助ける”んだ!!」
黒崎一護の強い叫びに優姫はハッとする。
迷うことなんてなかった……
あの方の為に私ができること、例え罪に身を堕とそうともあの方の心を救いたい……
このままルキアさんの刑が執行されたら、あの方の心は暗闇に閉じてしまう。
人知れず自分を責め続けて、心を殺してしまう……
そんなことはさせない、私がさせない!!
黒崎一護の強い気持ちに呼応するように優姫も決意を固めた。