第11章 旅禍
涅隊長と涅副隊長が治療室を出ていく。
更木隊長は終始私の手を握り、涅隊長との間に入って涅隊長から見えないように庇っていてくれた。
ぎゅっと握られた手を強く握り返した。
チラリと私を見た更木隊長の目が安心させるように僅かに細められた。
「…隊長…」
一角さんの声にハッと正気に戻る。
ベットに寝かされて肩から包帯を巻かれた痛々しい姿の一角さんに思わず顔をしかめてしまう。
「やっほっ!」
やちるさんが更木隊長の肩口が飛び出す。
「…あ、副隊長もいらしてたんですか。」
「だいじょうぶ!?心配したよつるりん!!」
「そのアダ名はやめろっつッたろドチビ。」
二人の軽快なやり取りを聞きながらおずおずと更木隊長の後ろから出る。
私の姿を目にした一角さんが少し切なそうな顔をした。
「おう、優姫もきてくれたのか。」
「はい、後から伺いますと約束しましたよね。」
微笑むと一角さんが僅かに頬を赤らめた。
しかし、すぐに真剣な顔になって更木隊長の顔を見る。
「…聞いたぜ、負けたんだってな。」
「…申し訳ありません。敗けて永らえることは恥と知りつつ戻って参りました。」
「…強えのか。」
「強いです。」
キッパリとした口調で一角さんが答える。
相手を認めてる……
斬り合いをして、どこか通じるものがあったのかな?
さっきも涅隊長には話さなかったのも訳があって旅禍を庇っているみたいだった。
「外見はオレンジの髪に身の丈ほどの大刀。向かった先は懺罪宮、四深牢。」
「…例の極囚か。」
ドキンと優姫の心臓が跳ねた。
オレンジの髪……
花太郎さんが連れ去られた時にいた旅禍だ。