第11章 旅禍
四番隊の隊舎の奥の総合救護詰所に着くとそっと背中から下ろされた。
「あんまり痛むなら優姫も診て貰ってこい。」
「大丈夫です。一角さんの所に行きましょう。」
一角さんのいる第一治療室から爆発音が響いた。
三人で何事かと向かい、部屋に入る直前に中から涅隊長の声が聞こえた。
優姫は神経麻痺の薬やら媚薬やらを嗅がされた過去が甦り身体を固くする。
青ざめた優姫にいち早く気づいた更木が左手で手を握る。
大きくて暖かい更木隊長の手が安心感を与えてくれた。
どうやら中にいる涅隊長は一角さんに旅禍のことを聞き出そうと躍起になっているようだった。
「…吐かないも何も…俺は知らないんですよ。旅禍の目的も行き先も何も。」
「…じゃあ何かネ?キミは何の情報も得られぬまま、ただただやられて帰ってきたというわけかネ?」
二人の静かな声が漏れ聞こえる。
涅隊長の静かな怒りが伝わってくる。
「ついでに言うと、俺は敵の顔も見てないし声も聞いてません。だからあなたにお伝えできることはこれっぽっちもありません。」
「…良かろう!ならば失態に相応の罰を受けて貰おうじゃないかネ!!」
激昂した涅隊長の叫ぶ様な声が響く。
私の手を握ったまま、更木隊長が第一治療室に飛び込む。
涅隊長の振り上げた手を掴んだ。
「…驚いたな、てめえはいつの間に他隊の奴を裁けるほど偉くなったんだ?涅。」
「…更木…!」
いまいましそうに歯噛みする涅隊長が更木隊長を睨み付ける。
掴まれた手を振りほどく。
「…隊長殿が来たんじゃあ仕方ない…私はひとまず退散するとするヨ…行くぞネム!モタモタするな薄鈍!」
「はい」